【税制改正】令和8年3月期決算の法人税申告マニュアル|経理が押さえるべき税制改正ポイント

渋谷区代々木の税理士、畑間です。
決算期が近づくと、
「今回の申告ではどの税制改正に対応すれば良いのか分からない」
というご相談を多くいただきます。

令和8年3月期(2026年3月期)の法人税申告では、新リース会計基準への対応中小企業向け税制の見直しなど、経理実務に大きな影響を与える改正が多数含まれています。 そこで今回は、令和8年3月期の申告に向けて、経理・財務担当者が 実務でどこに注意すべきか を、専門家の視点からわかりやすく解説します。
この記事を読むことで、申告調整や税効果会計への影響が明確になり、決算準備をスムーズに進めることができます。

新リース会計基準の概要・適用時期と税務上の対応

新リース会計基準のポイント

国際的な会計基準(IFRSなど)との整合性を図るため、これまでのルールが大きく変わります。
最大の変更点は、借手の処理において、これまで賃貸借処理が認められていた(PL計上されていた)オペレーティング・リース取引も含め、原則としてすべてのリース取引をオンバランス化(貸借対照表に「使用権資産」と「リース負債」を計上)するという単一のモデルに統一される点です。

適用時期

  • 原則適用:2027年(令和9年)4月1日以後に開始する事業年度から
  • 早期適用:2025年(令和7年)4月1日以後に開始する事業年度から可能

従って、令和8年3月期決算においては、新リース会計基準を早期適用している場合には税務調整も見直す必要があります。

税務上の対応(申告調整が必須)

借手の処理

借手の会計処理がオンバランス化されましたが、法人税法上は従来通り賃貸借処理(債務確定基準による損金算入)となっています。

【会計】オンバランス(使用権資産とリース負債の計上)
【税務】従来どおり賃貸借処理(債務確定基準)
【税務調整】
・オンバランスされた使用権資産及びリース負債の否認(別表5で両建処理)
・会計上認識される使用権資産減価償却費の否認
・会計上認識されるリース負債利息の否認
・確定基準により損金算入される支払リース料の認容減算(リース負債の認容)

減価償却の見直し

【残価保証額の廃止】
所有権移転外リースについて、取得価額から残価保証額を控除せず、定額で1円(備忘価額)まで償却可能になります。

【既存契約への適用届】
既存の契約についても、期限までに所定の届出を行うことで1円まで償却可能な経過措置が設けられています。届出書の提出期限は法人税の確定申告期限(中間仮決算を行う場合は当該中間申告の申告期限)までになります。

貸手の処理

新基準において割賦基準が認められなくなったため、法人税法上の延払基準の特例が廃止されました。ただし、一定期間は従前の処理が継続できる等、未計上額に関する経過措置が設けられています。

経理担当が押さえるべきポイント

  • リース契約書を一元管理し、影響額を早期に把握する
  • 会計処理と税務調整の乖離を前提に、システム更新・業務フローを準備する

中小企業等に関する税制の延長・見直し

中小企業向けの優遇税制は、制度ごとに要件が異なります。
特に 「中小法人」「中小企業者等」 の区分は混同しやすいため注意が必要です。

【前提】「中小法人」と「中小企業者等」の定義の違い

区分 要件
中小法人(法人税法) 資本金1億円以下 + 大法人(資本金5億円以上)に100%支配されていない
中小企業者等(租税特別措置法) 資本金1億円以下 + 大規模法人(資本金1億円超)に1/2超(または複数で2/3超)保有されていない

中小企業者等の方が株主要件が厳しい

主な改正点(令和8年3月期向け)

法人税率の特例見直し(対象:中小法人)

  • 所得800万円以下の部分の15%軽減税率が2年延長
  • 所得10億円超の事業年度は17%へ引上げ
  • グループ通算制度適用法人は対象外

中小企業経営強化税制の見直し・延長(対象:中小企業者等)

  • 適用期限が2年延長
  • 売上100億円超を目指す企業向けの拡充措置が新設
  • 建物・附属設備も対象に
  • 一方でデジタル化設備(C類型)は廃止

中小企業投資促進税制(対象:中小企業者等)

  • 2027年3月31日まで延長
  • 2027年3月31日までに事業の用に供した機械装置・ソフトウェア等が対象

経理担当が押さえるべきポイント

  • 自社がどちらの区分に該当するか、株主構成から正確に判定する
  • 軽減税率が15%か17%かを事前に確認
  • 設備投資の税制優遇を最大化するため、認定申請を確実に行う

試験研究費の額の範囲の見直し

税額控除の対象となる試験研究費から、
海外支店(恒久的施設)で行う事業に係る費用が除外されました。

  • 当期の集計範囲が変わるため注意
  • 比較年度の試験研究費も改正後の規定で再計算が必要

外国子会社合算税制等の見直し(事務負担軽減)

グローバル・ミニマム課税導入に伴う事務負担増を踏まえ、以下の見直しが行われました。

合算時期の変更

課税対象金額等の合算時期が、外国関係会社の事業年度終了の日の翌日から「2カ月」から「4カ月」を経過する日を含む親会社の事業年度へと変更され、時間的な余裕が生じます。

特に、親会社が3月決算で、外国子会社が12月決算である法人の組み合わせに特に大きな影響(時間的余裕)が生じます。この場合、令和8年3月期における内国法人の所得金額の計算上、令和7年12月期決算の外国関係会社に係る課税対象金額等は当期に合算せず、翌事業年度に合算することになります。

添付・保存書類の簡素化

次の書類が書類添付義務・保存義務の対象から除外されました。

  • 株主資本等変動計算書、損益金の処分に関する計算書その他これらに準ずるもの
  • 貸借対照表及び損益計算書に係る勘定科目の内訳明細書

外形標準課税の見直し(減資・100%子法人等への対応)

外形標準課税の範囲拡大に関して、大企業の減資への対応、企業グループ内での100%子法人等への対応がありますが、このうち大企業の減資への対応が適用開始となります。

大企業の減資への対応(令和7年4月1日以後開始事業年度から)

当分の間、前事業年度に外形標準課税の対象であった法人であって、当該事業年度に減資などにより資本金が1億円以下になった場合でも、「資本金と資本剰余金の合計額」が10億円を超える場合は、引き続き外形標準課税の対象となる追加基準が設けられました。

100%子法人等への対応(令和8年4月1日以後開始事業年度から)

資本金と資本剰余金の合計額が50億円を超える大規模法人等(特定法人)の100%子法人等のうち、当該事業年度末日の資本金が1億円以下であっても、「資本金と資本剰余金の合計額」が2億円を超える場合は、新たに外形標準課税の対象となります。なお、税負担の激変緩和措置として、新たに課税対象となる法人には数年間にわたり事業税額から一定額を控除する経過措置が講じられます。

イノベーションボックス税制の創設

青色申告法人が、特許権やAI関連技術を活用したプログラムの著作物の譲渡・貸付け等を行った場合、その取引に係る所得金額を基礎とした金額の30%を損金算入できる新制度が開始されました。

適用には、事前の経済産業省への申請と承認が必要です。

防衛特別法人税導入に伴う「税効果会計」・「実効税率」への影響

防衛力強化に係る財源確保のため、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から「防衛特別法人税」が導入されます。各課税事業年度の課税標準法人税額から、年500万円の基礎控除額を差し引いた金額に対して、法人税額の4%の税率が課されます。

経理担当が押さえておくべきポイント

実際の課税は令和8年4月以降の事業年度からですが、税効果会計における「法定実効税率」には先行して影響が及びます。令和8年3月期の決算において、令和8年3月期より後に解消する一時差異(長期の一時差異)については、防衛特別法人税を含めた新税率の影響を考慮して計算する必要があります。

東京都における実効税率の変動

区分 現行法
(2026年3月31日までに開始する事業年度)
改正案
(2026年4月1日以後に開始する事業年度)
標準税率 東京都超過税率 標準税率 東京都超過税率
外形標準課税対象法人 29.74% 30.62% 30.64% 31.52%
外形標準課税対象外法人 33.58% 34.59% 34.43% 35.43%

まとめ:早めの実務対応と専門家への相談を

令和8年3月期の法人税申告は、リース税制の抜本的な見直しや、中小企業向けの要件変更など、多岐にわたる重要な改正が含まれています。

対応すべき点が多く、自社ですべてを負担するのは難しいと感じる方もいるかもしれません。実務への影響を正確に把握し、税制優遇を漏れなく活用するためにも、自社の強みと課題を整理し、信頼できる専門家と一緒に計画を作り込むことをおすすめします。

「人手が足りず、決算作業、申告作業で税制改正対応ができるか不安だ」「自社の株主構成でどの税制優遇が使えるか知りたい」「新リース基準の申告調整がよくわからない」という方は、ぜひ一度ご相談ください。

畑間税理士事務所では、渋谷・新宿エリアを中心に企業の皆様を全力でサポートします。
「まずは話だけ聞いてみたい」という方も大歓迎です。会計の不安を、未来への確信に。
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執筆者紹介

代表

代表税理士 畑間 彬宏

畑間税理士事務所 代表

大手税理士法人で10年間、上場・外資系企業の税務マネージャーとして従事。現在は渋谷・新宿を拠点に、スタートアップやフリーランスの「挑戦」を支援。「事業の成功をデザインする」を掲げ、会社設立から創業融資、クラウド会計導入まで、代表本人が直接伴走するスタイルを貫く。

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