設立1期目・2期目に多い経理ミスとその防ぎ方【税理士が解説】
「知らなかった」では済まない。設立1期目・2期目の経理ミスと防ぎ方
渋谷区代々木の税理士、畑間です。
会社を設立してからの1期目・2期目は、経営者にとって経理・税務のルールを一通り経験する最初の期間です。この時期特有のミスは、金額の大小にかかわらず「知らなかった」では済まされないものが少なくありません。今回は、設立初期に起こりやすい経理ミスを具体例とともに紹介し、それぞれの影響度、そして税理士がチェックすることの意義について解説します。

なぜ設立1期目・2期目に経理ミスが集中するのか
設立初期にミスが集中しやすいのには理由があります。役員報酬の決定や各種届出書の提出など、「事業年度開始から○ヶ月以内」「設立から○ヶ月以内」といった、通常の年次業務にはない一度きりの期限付き手続きが集中しているためです。加えて、経営者自身がプレイヤーとして日々の業務に追われ、経理・税務の優先順位が下がりがちな時期でもあります。
ここからは、実際によく見られるミスを、影響度とあわせて具体的に見ていきましょう。

ミス事例①:役員報酬の決定・改定タイミングのミス【影響度:大】
法人税法上、役員報酬を損金(経費)として認めてもらうためには、「定期同額給与」という原則を満たす必要があります。ポイントは、事業年度開始から3ヶ月以内に金額と支給時期を確定させ、それ以降は原則として金額を変更しないことです。
「初月は業績が読めないので少なめにして、軌道に乗ってから増額しよう」という考え方は、一見合理的に思えますが、期の途中で増額すると、その増額分は損金として認められません。結果として、増額した分の報酬に対して余計に法人税がかかってしまうことになります。
ミス事例②:税務署への届出書の提出漏れ【影響度:大】
会社設立時には、法人設立届出書のほかにも、期限が定められた重要な届出書がいくつもあります。特に見落とされやすいのが「青色申告の承認申請書」です。
- 提出期限の目安:設立の日から3ヶ月を経過した日と、最初の事業年度終了日の前日のいずれか早い日まで
- 提出を忘れた場合の影響:最大65万円の青色申告特別控除が使えない、赤字を最大10年間繰り越せる「欠損金の繰越控除」が使えないなど、税制上の優遇を丸ごと1期分逃してしまう
そのほか、給与支払事務所等の開設届出書(開設の日から1ヶ月以内)、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書(提出しないと毎月納付が必要)なども、提出漏れが起きやすい書類です。
ミス事例③:消費税の課税事業者判定ミス【影響度:大】
「設立2期目までは消費税が免税」というイメージを持っている経営者は多いのですが、これは常に当てはまるわけではありません。
- 資本金1,000万円以上で設立した場合:基準期間がなくても、設立1期目・2期目から消費税の課税事業者になります
- 設立1期目の上半期(特定期間)の課税売上高、または給与等支払額のいずれかが1,000万円を超えた場合:2期目から課税事業者になります
この判定を誤ると、「免税事業者だと思って消費税分も売上として使ってしまっていたが、実際は納税義務があった」という事態になりかねず、資金繰りに大きな影響を与えます。
ミス事例④:創立費・開業費の処理漏れ・計上ミス【影響度:中】
会社設立前後にかかった費用は「創立費」「開業費」という繰延資産として計上できますが、この処理を知らずに、支出した費用をそのまま経費にしてしまったり、逆に本来経費にできるものを見落としてしまったりするケースが見られます。創立費・開業費は税務上「任意償却」が認められているため、利益が出た年度にまとめて償却するなど、正しく処理できれば節税の選択肢が広がります(詳しくは、創立費・開業費の取り扱いについて解説した別記事もご参照ください)。
ミス事例⑤:法人と個人の資金の混同【影響度:中】
個人事業主から法人成りした経営者に特に多いのが、法人の口座と個人の口座、経費の混同です。法人のお金は法人のものであり、経営者個人が自由に使える資金ではありません。役員が会社の経費を立て替えた場合や、逆に会社のお金を個人的に使った場合は、「役員借入金」「役員貸付金」として区分し、きちんと記録しておく必要があります。この整理を怠ると、税務調査で経費性を否認されたり、意図しない役員賞与(損金不算入)と認定されたりするリスクがあります。
ミス事例⑥:固定資産の計上漏れ・減価償却の計算ミス【影響度:中】
パソコンや什器備品などを購入した際、10万円以上のものは「固定資産」として減価償却する必要がありますが、うっかり全額を経費として計上してしまうケースがあります。また、期の途中で取得した資産は、購入した月から決算月までの月数で按分して減価償却費を計算する必要があり、この月割計算を忘れて年間の減価償却費をそのまま計上してしまうミスもよく見られます。
ミス事例⑦:社会保険・源泉徴収の手続き漏れ【影響度:中〜大】
法人は、代表者1人だけの会社であっても、原則として社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入義務があります。この手続きを怠ると、後から加入時期に遡って保険料の徴収が行われることがあり、まとまった資金負担が急に発生することになります。また、従業員に給与を支払う際の源泉徴収税額の計算ミスや納付漏れも、延滞税・不納付加算税の対象となるため注意が必要です。

なぜ税理士のチェックが有効なのか
ここまで紹介したミスの多くに共通しているのは、「知らなかった」「見落としていた」ことが原因である点です。税理士が経理をチェックすることの意義は、単に申告書を作ることではなく、次のような点にあります。
- 期限のある手続きを、経営者に代わって把握・リマインドできる:役員報酬の決定期限、届出書の提出期限など、一度きりの重要な期限を漏れなく管理できます
- 第三者の目で経理のクセ・思い込みを修正できる:自己流の経理では気づきにくい判断ミスを、月次・年次のタイミングで発見できます
- 節税の選択肢を、期限内に提案できる:役員報酬の設計や創立費・開業費の償却タイミングなど、後から修正できない判断を、早い段階で一緒に検討できます
- 経営者が本業に集中できる:経理・税務にかける時間と不安を減らし、事業成長により多くの時間を使えるようになります
特に設立1期目・2期目は、一つひとつのミスの影響が大きくなりやすい時期です。「今のところ大きな問題は起きていないから大丈夫」と思っていても、実際にはすでに取り返しのつかない期限を過ぎてしまっているケースも少なくありません。
まとめ:設立初期のミスは「気づいた時には手遅れ」になりやすい
ここまで紹介したミスと影響度を一覧表で振り返ってみましょう。
| よくある経理ミス | 影響度 | 主なリスク |
| 役員報酬の決定・改定タイミングのミス | 大 | 報酬の一部が損金不算入になり、法人税負担が増える |
| 税務署への届出書の提出漏れ(青色申告承認申請書など) | 大 | 最大65万円の青色申告特別控除や欠損金の繰越(10年)が使えなくなる |
| 消費税の課税事業者判定ミス | 大 | 想定していなかった消費税の納税が発生し、資金繰りを圧迫する |
| 創立費・開業費の処理漏れ・計上ミス | 中 | 本来使えたはずの経費・節税の機会を逃す |
| 法人と個人の資金の混同 | 中 | 税務調査で経費性を否認されるリスク、経理の信頼性低下 |
| 固定資産の計上漏れ・減価償却の計算ミス | 中 | 利益(税額)を実態より過大または過小に計上してしまう |
| 社会保険・源泉徴収の手続き漏れ | 中〜大 | 遡っての追加徴収、延滞金、従業員との信頼関係悪化 |
- 設立1期目・2期目は、期限付きの一度きりの手続きが集中するため、経理ミスが起こりやすい時期
- 特に役員報酬・届出書の提出漏れ・消費税の判定ミスは影響度が大きく、後から取り返しがつきにくい
- 税理士によるチェックは、期限管理・第三者目線での修正・節税提案・経営者の時間確保という4つの意義がある
「うちは大丈夫だろうか」と少しでも不安を感じたら、決算を迎える前に一度専門家に確認することをおすすめします。畑間税理士事務所では、渋谷区・新宿区を中心に全国で設立されたばかりの法人様からのご相談を随時お受けしています。
執筆者紹介

代表税理士 畑間 彬宏
畑間税理士事務所 代表
大手税理士法人で10年間、上場・外資系企業の税務マネージャーとして従事。現在は渋谷・新宿を拠点に、スタートアップやフリーランスの「挑戦」を支援。「事業の成功をデザインする」を掲げ、会社設立から創業融資、クラウド会計導入まで、代表本人が直接伴走するスタイルを貫く。




