決算期に検討したい5つの節税テクニック|少額減価償却資産の特例から在庫評価まで
渋谷区代々木の税理士、畑間です。
決算月が近づくと「今期中に何か対策を打てないか」と考える経営者の方は多いのではないでしょうか。決算対策には、生命保険や共済のように数か月かけて準備するものもあれば、決算月の直前でも実行できるものもあります。今回は、決算期が近づいてから検討しても間に合う代表的な5つのテクニックを、なぜ節税になるのか、どの程度の効果が見込めるのかとあわせて解説します。あわせて、これらのテクニックの多くが「税負担そのものを減らす」のではなく「税負担のタイミングを繰り延べる」効果である、という見落とされがちなポイントについても整理します。

決算期に検討したい5つの節税テクニック
まずは5つのテクニックの全体像を一覧で確認しましょう。
| テクニック | 対象・要件の概要 | 節税の性質 |
|---|---|---|
| ① 少額減価償却資産の特例 | 中小企業者等が取得価額40万円未満の資産を年300万円まで即時償却(令和8年4月1日以後取得分) | 課税の繰延べ |
| ② 中小企業経営強化税制 | 経営力向上計画の認定を受けた中小企業者等が一定設備につき即時償却または7〜10%の税額控除を選択適用 | 即時償却=繰延べ/税額控除=恒久的軽減 |
| ③ 決算賞与の未払計上 | 通知・1か月以内の支払・損金経理の3要件を満たせば翌期支払でも当期損金にできる | 課税の繰延べ |
| ④ 短期前払費用の特例 | 地代・保険料等を1年以内の前払いで支払った場合、支払時に全額損金にできる | 課税の繰延べ(初年度のみ) |
| ⑤ 棚卸資産の評価損 | 著しい陳腐化・破損等がある在庫を時価まで評価切り下げて評価損を計上 | 実質的な損失の前倒し計上 |
①少額減価償却資産の特例
青色申告書を提出する中小企業者等(従業員数がおおむね500人以下等の要件を満たす法人)が、取得価額40万円未満の減価償却資産を取得して事業の用に供した場合、年間300万円を限度に、その全額を取得した事業年度の損金にできる特例です。令和8年度税制改正により、従来の30万円未満という基準が40万円未満に引き上げられました。適用のタイミングは事業年度ではなく個々の資産の取得日で判定されるため、決算月が3月の会社であっても、令和8年3月31日以前に取得した資産は従来どおり30万円未満が基準になる点に注意してください。適用期限は令和11年3月31日までとされています。なお、主要な事業として行われるものを除き、貸付けの用に供する資産は対象から除外されている点にも留意が必要です。
②中小企業経営強化税制
資本金1億円以下等の中小企業者等が、経営力向上計画の認定を受けたうえで、一定規模以上(機械装置であれば1台160万円以上等)の新品の設備を取得した場合に、即時償却または取得価額の7〜10%(資本金3,000万円超1億円以下の法人は7%)の税額控除のいずれかを選択できる制度です。適用期限は令和9年3月31日までとされています。この制度を利用するうえで特に注意したいのが、経営力向上計画の認定を受けるタイミングです。原則として設備を取得する前に計画の認定を受けている必要がありますが、認定が間に合わない場合でも、設備の取得日から60日以内に計画の申請書が受理されれば、取得した事業年度内に認定を受けることを条件に適用が認められる取り扱いがあります。ただし60日という期間は決して長くないため、決算月の直前になって慌てて設備投資を決めるのではなく、数か月前から余裕を持って準備を進めることをおすすめします。
③決算賞与の未払計上
決算月までに実際の支払いが間に合わなくても、次の3つの要件をすべて満たせば、決算賞与を当期の損金に算入できます。1つ目は、支給額を各従業員に対して個別かつ同時期に通知すること。2つ目は、通知した金額を、事業年度終了の日の翌日から1か月以内に全従業員へ支払うこと。3つ目は、通知した日の属する事業年度において、その支払額を損金経理していることです。通知後に対象者が退職して支払いを受けられなかった場合や、支給日前に退職した者には支給しないという規定になっている場合は、支給額が確定していないと判断され、その対象者分だけでなく通知全体が否認されるリスクがあるため注意が必要です。役員賞与にはこの取り扱いは適用されない点も押さえておいてください。
④短期前払費用の特例
地代家賃や保険料、システムのリース料など、等質・等量のサービスを継続的に受けるための対価を、支払った時から1年以内の期間に対応するものとして前払いした場合、その支払った事業年度の損金にできる特例です。毎年継続して同じ処理をしていることが前提であり、その事業年度だけ利益を圧縮する目的で単発的に適用することは認められません。また、支払時点から1年を超える期間に対応する前払い(たとえば2月に翌年3月までの1年分の家賃を前払いするようなケース)は対象外です。この特例は、来期分の費用を当期に前倒しするものであるため、翌期以降は前払い済みの分だけ損金が減ることになり、効果が生じるのは基本的に導入初年度だけである点に注意してください。
⑤棚卸資産の評価損
決算月には、期末の在庫について実地棚卸を行い、著しく陳腐化した商品や破損品がないかを確認しましょう。棚卸資産の評価方法として低価法を選定している場合は、期末の時価が取得原価を下回っていれば、その差額を評価損として損金にできます。一方、原価法を選定している場合は、単に売れ行きが悪い、型落ちであるといった事情だけでは評価損の計上は認められず、災害による損傷や、性能の著しい劣化など「著しい陳腐化」と言える客観的な事実が必要です。評価損を計上する際は、時価の下落や陳腐化を示す資料(取引価格の証明書、写真、査定書等)を整えておくことが、税務調査に備えるうえで重要です。

これらのテクニックの効果を正しく理解する:「繰延べ」と「軽減」の違い
ここで整理しておきたいのが、上記5つのテクニックの多くは、税負担そのものを減らす「軽減」ではなく、税負担が発生するタイミングを先送りする「繰延べ」にすぎないという点です。たとえば①少額減価償却資産の特例は、本来であれば複数年に分けて計上する減価償却費を、当期にまとめて前倒しで計上しているだけであり、翌期以降の減価償却費がその分減るため、資産の耐用年数トータルで見れば税負担の総額は変わりません。③決算賞与の未払計上も、本来翌期に発生する人件費を当期の損金として扱っているだけで、翌期の損金がその分減ります。④短期前払費用の特例も同様に、初年度だけ効果が生じる繰延べです。これに対して、②中小企業経営強化税制で税額控除を選択した場合は、取得価額の一定割合が法人税額から直接差し引かれる恒久的な減税効果があります。⑤棚卸資産の評価損は、実際に発生している価値の下落を早期に損金として認識するものであり、繰延べというよりは損失の適正な計上に近い性質を持ちます。「繰延べ」であっても、資金繰りの観点では当期の納税額を抑えられるという実務上のメリットは十分にありますが、「節税=税負担がなくなる」と誤解しないよう、この違いを理解したうえで活用することが大切です。
節税額の目安(簡易シミュレーション)
具体的にどの程度の効果があるのか、①少額減価償却資産の特例と②中小企業経営強化税制を例に確認してみます。実効税率は概算で33%とします。
①のケースとして、決算までにノートパソコンや什器などを合計200万円分(40万円未満のものを複数)購入し、全額を即時償却したとします。仮にこれらの資産が耐用年数5年・定率法(償却率0.400)で通常どおり減価償却する場合、初年度の償却費はおよそ80万円にとどまります。即時償却により200万円全額を損金にできるため、通常の場合と比べて120万円多く当期の損金を計上できる計算になり、実効税率33%として、当期の税負担がおよそ40万円軽減されます。ただし前述のとおり、これは翌期以降の減価償却費が先取りされる「繰延べ」であり、資産の耐用年数トータルで見た税負担が減るわけではない点に注意してください。
②のケースとして、経営力向上計画の認定を受けたうえで300万円の設備を取得し、7%の税額控除を選択したとします。この場合、300万円×7%=21万円が、当期の法人税額から直接控除されます。こちらは即時償却とは異なり、資産の耐用年数にかかわらず恒久的に税負担が軽減される効果です。
※このシミュレーションは、耐用年数・償却率・実効税率を概算で仮定した簡易的なものです。実際の金額は、対象資産の種類や個別の状況によって変わりますので、あくまで目安としてご覧ください。
決算対策を進める際の注意点
決算対策を検討する際は、次の点に注意してください。
- 少額減価償却資産の特例・中小企業経営強化税制ともに青色申告法人が対象であり、白色申告では利用できない
- 中小企業経営強化税制は、経営力向上計画の認定が事業年度をまたぐと適用を受けられなくなるため、設備投資を決めたら早めに計画の申請準備を始める
- 決算賞与の未払計上は、通知後に支給対象者が退職するなどして支払いができなかった場合、通知全体が否認されるリスクがあるため、支給日直前の駆け込み実施は避け、余裕を持ったスケジュールで進める
- 短期前払費用の特例は、毎年継続して同じ処理を行っていることが前提であり、その年だけ利益調整のために単発で使うことは認められない
- 棚卸資産の評価損は、単なる「売れ行きが悪い」という主観的な判断ではなく、時価の下落や陳腐化を示す客観的な資料を整えたうえで計上する
まとめ:「繰延べ」と「軽減」を理解したうえで組み合わせる
- 決算期が近づいてからでも検討できる代表的な節税テクニックとして、少額減価償却資産の特例・中小企業経営強化税制・決算賞与の未払計上・短期前払費用の特例・棚卸資産の評価損の5つがある
- このうち中小企業経営強化税制の税額控除を除く多くは、税負担を減らす「軽減」ではなく、タイミングを前倒しする「繰延べ」である点を理解しておく必要がある
- 簡易シミュレーションでは、少額減価償却資産の特例(200万円のケース)で当期の税負担がおよそ40万円軽減(繰延べ)、中小企業経営強化税制の税額控除(300万円のケース)で21万円が恒久的に軽減される計算になる(あくまで簡易的な目安)
- 中小企業経営強化税制は経営力向上計画の認定に時間がかかるため、決算月の直前ではなく数か月前から準備を始めることが重要
- 決算賞与・棚卸資産の評価損は、要件や客観的な証拠が不十分だと税務調査で否認されるリスクがある
決算対策は、その期の業績や資金繰り、翌期以降の見通しとあわせて総合的に判断する必要があります。実行に移す前に、一度専門家にご相談いただくことをおすすめします。
執筆者紹介

代表税理士 畑間 彬宏
畑間税理士事務所 代表
大手税理士法人で10年間、上場・外資系企業の税務マネージャーとして従事。現在は渋谷・新宿を拠点に、スタートアップやフリーランスの「挑戦」を支援。「事業の成功をデザインする」を掲げ、会社設立から創業融資、クラウド会計導入まで、代表本人が直接伴走するスタイルを貫く。





