【ニュース解説】全東信の破産から学ぶ、取引先倒産時の会計・税務のポイント

全東信の破産から学ぶ、取引先倒産時の会計・税務のポイント
渋谷区代々木の税理士、畑間です。
2026年7月、クレジットカード決済代行大手の「全東信」が破産し、大きなニュースになりました。「名前は聞いたことがあるけれど、何が起きているのかよくわからない」という方も多いのではないでしょうか。今回は、全東信の破産について初めての方にもわかるように整理するとともに、自社の取引先が同じように倒産してしまった場合、会計・税務上どのような対応が必要になるのかを解説します。
そもそも「全東信」とは?何が起きたのか
株式会社全東信は、大阪市中央区に本社を置く、クレジットカード売上の「早期決済代行サービス」を提供してきた会社です(1987年創業、法人設立は2006年9月)。
通常、飲食店などがクレジットカードで代金を受け取った場合、実際に入金されるのはカード会社の締め日から数週間後になるのが一般的です。全東信は、この入金を業界に先駆けて「週2回・月6回」というスピードで立て替え払いする独自のサービスを展開し、資金繰りが厳しくなりやすい飲食店・スナック・キャバクラなどの夜間業種を中心に、2018年時点で20万店を超える加盟店を抱えていました。
しかし、次の2つの要因が重なり、資金繰りが行き詰まりました。
- 新型コロナウイルスの感染拡大により、主要顧客である飲食店が時短営業・休業を余儀なくされ、全東信自身の収入も2021年3月期に約80億円から約50億円へ急減し、その後も赤字が続いたこと
- 2024年1月、営業本部長ら3人が不正な加盟店契約に関与したとして逮捕・書類送検される事件が発生し、信用不安が広がって資金調達が難しくなったこと
こうした状況の中、2026年7月6日、大阪地方裁判所から破産手続開始の決定を受けました。負債総額は、当初の報道では約1,259億円とされていましたが、帝国データバンクの調査によれば破産申請時点で約1,151億6,400万円とされており、2026年に入ってからの倒産としては最大規模となっています。金融機関だけでも63行・信金等が債権者として名を連ねています。
なぜ飲食店を中心に大きな影響が出ているのか
全東信の加盟店だった飲食店などは、大きく2つの問題に直面しています。
- 立て替えてもらうはずだった売上代金が入金されなくなり、その分の債権が「破産債権」として扱われ、全額の回収は難しくなっていること
- 決済端末が使えなくなったことで、通常のカード会社との直接契約に切り替えるまでの間、顧客の支払い手段が制限され、売上機会を失う可能性があること
特に、早い入金サイクルに依存して日々の資金繰りを回していた小規模な飲食店ほど、影響が大きくなりやすい構造です。今後、通常のカード決済サイクル(入金までに数週間かかる方式)に戻ることで、一時的に資金繰りが悪化し、いわゆる「黒字倒産」のリスクが高まることも懸念されています。実際に、日本飲食団体連合会は、連鎖倒産を防ぐための「セーフティネット保証1号」の適用を関係機関に要請しています。
【本題】取引先が倒産したとき、会計上どう対応する?
ここからは、自社の取引先が倒産してしまった場合に必要となる、会計・税務上の基本的な対応を整理します。
① まずは債権の状況を整理する
取引先の破産手続開始決定などの情報を得たら、まず売掛金・未収入金などの金額を確認し、回収の見込みがどの程度あるのかを整理します。決算書上は、通常の売掛金と区別して「破産更生債権等」などの科目に振り替えて表示するのが一般的な実務です。
② 貸倒損失として損金算入できるかを検討する
回収不能が明らかになった債権は、一定の要件のもとで「貸倒損失」として損金(費用)に算入できます。法人税基本通達では、次の3つの類型に区分されています。
| 類型 | 内容 | 破産のケースでは |
|---|---|---|
| ① 法律上の貸倒れ(法基通9-6-1) | 会社更生法・民事再生法の認可決定、特別清算の協定認可、債権者集会での切り捨て、書面による債務免除など、法的手続で債権が消滅した場合 | 破産は法的な「切り捨て」の手続がないため、原則としてそのままは該当しない |
| ② 事実上の貸倒れ(法基通9-6-2) | 債務者の資産状況等から見て、全額が回収できないことが明らかな場合 | 破産手続の終結決定(配当がないことが確定した時点)で該当するのが基本形 |
| ③ 形式上の貸倒れ(法基通9-6-3) | 継続的な取引先の売掛債権で、取引停止後1年以上弁済がない場合など | 備忘価額1円を残して計上可能。一括での回収不能が確定していない段階でも使える場合がある |
注意:破産手続開始決定=すぐに貸倒損失、ではない
ここが誤解されやすいポイントです。破産手続の「開始」決定は、あくまで清算手続がスタートした合図であり、この時点では配当(債権者への一部弁済)が出るかどうかがまだ確定していません。そのため、原則として開始決定の時点で直ちに全額を貸倒損失として計上することはできず、破産管財人による資産の処分が終わり、配当がないこと(または配当額)が確定する「破産手続終結決定」の時点で計上するのが基本的な考え方です。ただし、債務者の資産状況などから回収不能が明らかな場合には、終結を待たずに計上できるケースもあるため、個別の状況ごとに慎重な判断が必要です。
③ 貸倒引当金の活用を検討する(中小法人等)
資本金1億円以下の中小法人など一定の法人については、貸倒損失として確定する前の段階でも、更生手続の開始申立てなど一定の事由が生じている金銭債権について、回収の見込みがないと認められる部分の金額を「個別評価金銭債権に係る貸倒引当金」として損金に算入できる制度があります。貸倒損失の計上を待つ間の資金繰り・税負担対策として検討の余地があります。
税務上の重要論点:消費税の「貸倒れに係る税額控除」を忘れずに
売掛金などが貸倒れになった場合、消費税にも見落としがちな取扱いがあります。過去に課税売上として消費税を申告・納付した債権が貸倒れになったときは、その貸倒れ額に含まれる消費税相当額を、その課税期間の売上に対する消費税額から控除できる制度です(消費税法第39条)。
- 標準税率(10%)が対象の場合:貸倒れ金額 ×7.8/110
- 軽減税率(8%)が対象の場合:貸倒れ金額 ×6.24/108
この控除を受けるためには、貸倒れの事実を証明する書類(破産手続開始決定書、配当がないことを示す書類など)を保存しておく必要があります。貸倒損失の計上と合わせて、消費税の申告への反映も忘れないようにしましょう。
連鎖倒産を防ぐためにできること
- セーフティネット保証1号(連鎖倒産防止)の活用:大型倒産事業者に対して一定額以上の売掛金債権を持つ中小企業者は、通常の保証枠とは別枠の信用保証を受けられる可能性があります。取引先の倒産で資金繰りに支障が出た場合は、早めに市区町村の商工担当課や信用保証協会に相談しましょう
- 与信管理の強化:取引開始前・取引継続中の取引先の信用調査、決済手段や取引先の分散、取引信用保険の活用などにより、1社の倒産による影響を最小限に抑える体制づくりが重要です
- 日頃からの資金繰り管理:黒字であっても、入金サイクルの変化ひとつで資金繰りが厳しくなることがあります。月次での資金繰り表の作成・確認を習慣化しておくことをおすすめします
まとめ:取引先の倒産に直面したら、早めの相談を
- 全東信は、飲食店等向けのクレジットカード早期決済代行サービスを展開していたが、コロナ禍による業績悪化と不正契約問題により、2026年7月に破産手続開始決定を受けた
- 取引先が倒産した場合、売掛金は「破産更生債権等」に区分し、原則として破産手続終結決定の時点で貸倒損失として計上するのが基本
- 消費税についても「貸倒れに係る税額控除」を忘れずに適用し、証拠書類は必ず保存しておく
取引先の倒産は、いつ・どの会社にも起こり得るリスクです。「どの時点で、どのように処理すればいいかわからない」という場合は、判断を誤ると税務調査で否認されるおそれもあるため、早めに専門家へご相談ください。畑間税理士事務所では、渋谷区・新宿区を中心に全国の経営者・個人事業主の皆様からの取引先倒産に関するご相談も随時お受けしています。
執筆者紹介

代表税理士 畑間 彬宏
畑間税理士事務所 代表
大手税理士法人で10年間、上場・外資系企業の税務マネージャーとして従事。現在は渋谷・新宿を拠点に、スタートアップやフリーランスの「挑戦」を支援。「事業の成功をデザインする」を掲げ、会社設立から創業融資、クラウド会計導入まで、代表本人が直接伴走するスタイルを貫く。





