開業費とは?範囲・仕訳・個人事業主と法人の違いを税理士が解説

「これって開業費になる?」個人事業主・法人それぞれの範囲と仕訳を解説
渋谷区代々木の税理士、畑間です。
開業や会社設立の準備を進めていると、「これは開業費になるの?」「個人事業主と会社では扱いが違うと聞いたけれど、何がどう違うの?」といった疑問をよく耳にします。今回は、開業費の範囲や含まれないものの境界線、会計上・税務上の取り扱いについて、個人事業主と法人それぞれのケースに分けて網羅的に解説します。
そもそも「開業費」とは?繰延資産としての位置づけ
開業費とは、事業を開始するにあたり、開業準備のために特別に支出した費用のことです。税務上は「繰延資産」に分類され、支出時に全額をその年・その事業年度の費用にするのではなく、資産としていったん計上したうえで、複数年にわたって費用配分することが認められています。
ただし、一般的な繰延資産(例:資産を賃借するための権利金など)が原則として一定期間で規則的に償却しなければならないのに対し、開業費は税務上「任意償却」が認められている点が大きな特徴です(詳しくは後述します)。
個人事業主と法人、開業費の考え方はここが違う
開業費の基本的な性質は個人事業主・法人で共通していますが、対象となる「期間」の区切り方が異なります。まずは全体像を比較表で確認しましょう。
| 項目 | 個人事業主 | 法人 | |||||||||||||||||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 区分の考え方 | 「開業費」1本のみ | 「創立費」と「開業費」の2本に分かれる | |||||||||||||||||||||||||||
| 対象となる期間 | 開業前〜開業準備のための支出 |
創立費:会社成立(設立登記)前まで 開業費:会社成立後〜営業開始まで |
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| 根拠となる法令 | 所得税法施行令7条・137条など | 法人税法施行令14条・64条、会社計算規則第37条など | |||||||||||||||||||||||||||
| 会計上の区分 | 繰延資産(青色申告決算書に記載) | 繰延資産(貸借対照表に計上) | |||||||||||||||||||||||||||
| 税務上の償却方法 | 任意償却(未償却残高の範囲内で自由に必要経費算入) | 任意償却(未償却残高の
【個人事業主】開業費の範囲 個人事業主の場合、「開業日(事業を開始した日)より前」に、開業の準備のために特別に支出した費用が開業費の対象です。法令上、何年前まで遡れるかという明確な期間制限はありませんが、実務上は開業準備として合理的に説明できる期間内の支出であることが望ましいとされています。
【法人】開業費と「創立費」の違い 法人の場合、個人事業主にはない「創立費」という区分が加わる点に注意が必要です。境目になるのは「会社成立日(設立登記の日)」です。
「設立登記の前か後か」で創立費と開業費のどちらに計上するかが変わるため、法人を設立する際は、支出のタイミングと領収書の日付を意識して整理しておくことをおすすめします。 開業費に含まれないもの・注意すべき支出「事業のために使った費用だから何でも開業費になる」わけではありません。特に次のような支出は開業費に含まれないため、注意が必要です。
特に見落としやすいのが「経常的な費用は開業費に含まれない」という点です。開業前に支払った家賃であっても、毎月継続的に発生する性質の費用は「特別に支出した費用」とは言えないため、開業費ではなく、通常の必要経費・損金として処理するのが基本的な考え方です。 開業費の会計上の取り扱い(仕訳例)開業費が発生した時点では、費用ではなく「開業費」という繰延資産の勘定科目で計上します。 支出時の仕訳例(名刺作成費30,000円を現金で支払った場合) (借方)開業費 30,000円 / (貸方)現金 30,000円 償却時の仕訳例(開業費のうち10,000円を償却する場合) (借方)開業費償却 10,000円 / (貸方)開業費 10,000円 法人の場合、会社計算規則上は「創立費」「開業費」ともに、原則として資産計上後5年以内の効果の及ぶ期間にわたり、毎期均等額以上を償却するルールが定められています。もっとも、これは会計上(会社法上)の取り扱いであり、後述するとおり税務上は別の考え方(任意償却)が認められているため、実務では支出した年度に全額を費用処理してしまうケースも多く見られます。 開業費の税務上の取り扱い:「任意償却」で節税効果を高める開業費の最大の特徴は、税務上「任意償却」が認められていることです。任意償却とは、その年(事業年度)にいくら償却するかを、未償却残高の範囲内で納税者が自由に決められる仕組みです。
この「任意」であることを利用した代表的な節税の考え方が、次のようなタイミングの調整です。
なお、個人事業主の純損失の繰越控除は青色申告で最長3年、法人の欠損金の繰越控除は青色申告で最長10年(中小法人等)となっており、開業費の任意償却は、こうした赤字の繰越制度とあわせて、事業全体の税負担を数年単位でならして考えることができる点もポイントです。 開業費を計上する際の注意点
まとめ:開業費は「特別な支出」かどうかがポイント
開業費は「何が対象になるか」「いつ、いくら償却するか」の判断次第で税負担が変わってくる、意外と奥が深いテーマです。「この支出は開業費になるのか」「うちの場合、どう償却するのが得なのか」といったご相談は、畑間税理士事務所までお気軽にお寄せください。渋谷区を中心に全国の個人事業主・法人の皆様からのご相談を随時お受けしています。 執筆者紹介![]() 代表税理士 畑間 彬宏 畑間税理士事務所 代表 大手税理士法人で10年間、上場・外資系企業の税務マネージャーとして従事。現在は渋谷・新宿を拠点に、スタートアップやフリーランスの「挑戦」を支援。「事業の成功をデザインする」を掲げ、会社設立から創業融資、クラウド会計導入まで、代表本人が直接伴走するスタイルを貫く。 人気のコラム記事コラムタグ一覧まずは、あなたの事業への |






