株式会社と合同会社の違いを比較|設立費用から維持費まで解説

株式会社と合同会社、結局どっちがいい?初心者にもわかる選び方ガイド
渋谷区代々木の税理士、畑間です。
会社を設立しようと調べ始めると、必ず出てくるのが「株式会社」と「合同会社」という2つの選択肢です。「合同会社の方が安いって聞いたけど、何がどう違うの?」「結局どちらを選べばいいの?」という疑問に、初心者の方にもわかるように、設立時の比較・維持していく上での比較の両面から徹底的に解説します。この記事を読めば、自分がどちらを選ぶべきか判断できるようになります。
株式会社と合同会社の基本的な違いとは?
株式会社と合同会社は、どちらも法律上の「法人」であり、法人税などの税務上の扱いに違いはありません。最も大きな違いは、会社法上の分類と、それに伴う「経営の仕組み」です。
- 株式会社:出資者(株主)と経営者(取締役)を分けられる「所有と経営の分離」が原則の会社形態。会社法上の「株式会社」に分類される
- 合同会社:出資者(社員)がそのまま経営者になる「所有と経営の一致」が原則の会社形態。会社法上は「持分会社」というグループに分類され、平成18年の会社法施行で新設された比較的新しい形態
まずは両者の違いを一覧表で確認しましょう。
| 株式会社 | 合同会社 | |
| 出資者の呼び方 | 株主 | 社員(従業員ではなく出資者を指す) |
| 経営の仕組み | 所有と経営が分離(株主≠取締役も可能) | 所有と経営が一致(出資者=経営者) |
| 最高意思決定機関 | 株主総会 | 社員の同意(定款で設計可能) |
| 役員の任期 | 原則2年(非公開会社は最長10年まで伸長可) | 任期の定めなし |
| 決算公告の義務 | あり(毎年) | なし |
| 利益配分の自由度 | 原則、出資比率(持株比率)に応じる | 定款で出資比率と異なる配分も自由に設定可能 |
| 株式・持分の譲渡 | 原則自由(非公開会社は取締役会等の承認が必要な場合あり) | 原則、他の社員全員の承諾が必要 |
| 上場(IPO) | 可能 | 不可(上場を目指すなら株式会社が必須) |
| 社会的認知度 | 高い(一般的に馴染みがある) | 株式会社に比べるとやや低いが年々向上 |
【比較表】設立費用はどのくらい違う?
設立費用でもっとも差が出るのが「定款認証手数料」の有無です。株式会社は公証役場での定款認証が必須ですが、合同会社は定款認証そのものが不要なため、この手数料がかかりません。資本金300万円で電子定款を利用した場合の目安は次の通りです。
| 費用項目 | 株式会社 | 合同会社 |
| 定款認証手数料 | 3万円〜5万円(資本金額により変動) | 不要(0円) |
| 定款の印紙代 | 0円(電子定款の場合)/4万円(紙の場合) | 0円(電子定款の場合)/4万円(紙の場合) |
| 登録免許税 | 資本金×0.7%(最低15万円) | 資本金×0.7%(最低6万円) |
| 謄本交付手数料など | 約2,000円〜 | ― |
| 合計目安(電子定款) | 約20万円〜24万円 | 約6万円〜10万円 |
同じ条件で比較すると、合同会社は株式会社よりも設立費用を10万円以上抑えられるのが一般的です。「できるだけ費用を抑えて早く事業を始めたい」という方にとって、これは合同会社の大きな魅力のひとつです。
【比較表】設立後の維持費用(ランニングコスト)の違い
会社は設立して終わりではなく、その後も維持していくための費用がかかります。特に株式会社は、合同会社にはない「決算公告」の義務がある点に注意が必要です。
| 費用項目 | 株式会社 | 合同会社 |
| 決算公告費用 | 官報公告で年間6万円程度(電子公告等の方法もあり) | 不要 |
| 役員変更登記費用 | 任期満了ごとに重任登記が必要(登録免許税1万円〜) | 任期の定めがないため原則不要 |
| 株主総会の運営コスト | 招集通知の作成・開催の手間が発生 | 該当する手続きなし(社員の同意で足りる) |
| 法人住民税均等割など | 資本金・従業員数に応じて発生(会社形態による差はなし) | 資本金・従業員数に応じて発生(会社形態による差はなし) |
株式会社は毎年の決算公告や、役員の任期満了に伴う変更登記など、合同会社にはないランニングコストが発生します。長期的に見ると、この差は決して小さくありません。
意思決定の仕組みの違い:スピード重視なら合同会社
株式会社は「所有と経営の分離」を前提としているため、定款変更・増資・合併といった重要な意思決定には、原則として株主総会の決議が必要です。株主が複数いる場合、招集通知の準備や決議の手続きに一定の時間と手間がかかります。
一方、合同会社は出資者(社員)自身が経営を行う「所有と経営の一致」が原則のため、意思決定のルールを定款で柔軟に設計できます。社員が少人数(特に1人)であれば、株主総会のような手続きを経ずに、スピーディーに経営判断を下せるのが大きなメリットです。
利益配分の自由度:貢献度に応じて分けたいなら合同会社
株式会社は「株主平等の原則」により、原則として出資比率(持株比率)に応じて配当を行う必要があります。
これに対して合同会社は、定款で定めることにより、出資比率とは異なる割合で利益を配分することが認められています。例えば、出資額は少なくても事業への貢献度が高い共同経営者に、多めに利益を配分するといった柔軟な設計が可能です。複数人で共同創業する場合、この自由度は合同会社ならではの強みといえます。
対外的な信用力・資金調達のしやすさの違い
一般的に、株式会社の方が社会的な認知度・信用力が高いとされています。特に、大企業や官公庁との取引、金融機関の融資審査、新卒採用などの場面では、「株式会社」という形態そのものが安心材料になることがあります。
また、資金調達の方法にも大きな違いがあります。株式会社は株式を発行して第三者から出資を受けること(エクイティファイナンス)がしやすく、将来的な上場(IPO)も株式会社でなければ行えません。一方、合同会社は持分を株式のように自由に譲渡できないため、ベンチャーキャピタルなどからの大型出資や上場には不向きです。将来的に外部からの出資や上場を視野に入れているなら、株式会社を選ぶのが基本です。
なお、Google合同会社やApple Japan合同会社、Amazon Japan合同会社のように、日本法人としてあえて合同会社を選ぶ大企業も存在しており、合同会社の認知度は年々高まっています。
税務上の違いはある?
法人税・法人住民税・法人事業税といった税金の計算方法や税率は、株式会社であっても合同会社であっても違いはありません。税務上はどちらも「普通法人」として同じルールが適用されます。したがって、税負担だけを理由に会社形態を選ぶ必要はなく、設立費用・維持費用・経営の自由度・対外的信用力といった観点で判断するのが基本的な考え方です。
株式会社が向いている人・合同会社が向いている人
株式会社が向いている人
- 将来的に上場(IPO)や、ベンチャーキャピタル・投資家からの出資を目指している
- 対外的な信用力を重視し、大企業や官公庁との取引、採用活動を有利に進めたい
- 共同経営者が多く、出資比率に応じた明確なガバナンス(統治)の仕組みを整えたい
合同会社が向いている人
- できるだけ設立費用・維持費用を抑えて、スピーディーに事業を始めたい
- 1人、または少人数で経営し、迅速な意思決定を重視したい
- 出資比率にとらわれず、貢献度に応じて柔軟に利益配分したい
- フリーランスからの法人成りなど、対外的な信用力よりもコスト・柔軟性を優先したい
合同会社から株式会社への変更はできる?
「まずは合同会社で始めて、事業が軌道に乗ったら株式会社に変更する」という選択も可能です。これを「組織変更」といい、定款変更や債権者保護手続き、登記などの手続きを経て、合同会社から株式会社へ移行できます。ただし、組織変更にも登録免許税などの費用がかかるため、最初にどちらを選ぶかを慎重に検討しておくことが望ましいのは言うまでもありません。
まとめ:迷ったら「将来の資金調達」と「コスト」で判断する
- 株式会社と合同会社は税務上の扱いに違いはなく、経営の仕組み・費用・信用力の違いで選ぶのが基本
- 設立・維持コストを抑え、スピーディーに経営したいなら合同会社が有利
- 将来的な上場や外部からの出資、対外的な信用力を重視するなら株式会社が基本の選択肢
- 合同会社から株式会社への変更(組織変更)も可能なので、まずは合同会社で始めるという選択肢もある
どちらの形態にもメリット・デメリットがあり、「絶対にこちらが正解」というものはありません。事業内容や将来の展望によって最適な選択は変わりますので、判断に迷う場合は、設立前に専門家へ相談することをおすすめします。畑間税理士事務所では、渋谷区・新宿区を中心に全国で会社設立を検討されている皆様からのご相談を随時お受けしています。
執筆者紹介

代表税理士 畑間 彬宏
畑間税理士事務所 代表
大手税理士法人で10年間、上場・外資系企業の税務マネージャーとして従事。現在は渋谷・新宿を拠点に、スタートアップやフリーランスの「挑戦」を支援。「事業の成功をデザインする」を掲げ、会社設立から創業融資、クラウド会計導入まで、代表本人が直接伴走するスタイルを貫く。




