法人の節税、何から始める?経営者が使える9の手法を一覧で解説
渋谷区代々木の税理士、畑間です。
「法人化すると節税になる」とはよく言われますが、実際にどんな手法があるのか、体系的に整理して知る機会は意外と少ないのではないでしょうか。すでに法人化している経営者の方にとっても、役員報酬の見直しや決算前の対策など、使える手法を一度棚卸ししてみる価値があります。今回は、法人が使える代表的な節税手法を9個、一覧にして紹介します。それぞれがどういう理屈で節税になるのかを簡潔に押さえたうえで、気になる手法があれば、今後公開していく個別の詳細解説記事もあわせてご覧いただければと思います。

法人が使える節税手法、まずは一覧で押さえる
節税手法にはそれぞれ得意な場面があり、法人化を検討している段階で意識すべきものと、すでに法人化したあとの運用で活用するものとに大きく分かれます。まずは全体像を一覧表で確認しましょう。
| 節税手法 | 概要 | 主な対象 | 詳細記事 |
|---|---|---|---|
| ①役員報酬の決め方・見直し(所得分散) | 利益を「法人の利益」と「役員報酬」に分け、累進税率の分散と給与所得控除を活用。ただし定期同額給与のルール遵守が必要 | 法人化前後どちらも |
記事① 記事② |
| ②出張旅費規程・日当 | 出張の多い経営者・従業員への日当を非課税所得として支給 | 法人化後 | 今後執筆予定 |
| ③社宅制度の活用 | 会社名義で住居を借り上げ、賃料相当額との差額を経費化 | 法人化後 | 今後執筆予定 |
| ④生命保険の活用 | 保障の確保と将来の退職金原資を計画的に準備 | 法人化前後どちらも | 今後執筆予定 |
| ⑤共済・iDeCoの活用 | 小規模企業共済・経営セーフティ共済等で掛金を損金・所得控除に | 法人化前後どちらも | 今後執筆予定 |
| ⑥決算期の節税テクニック | 特別償却・少額減価償却資産の特例・棚卸資産の評価見直し等 | 法人化後 | 今後執筆予定 |
| ⑦交際費の損金算入枠 | 年800万円まで全額損金、または接待飲食費の50%損金 | 法人化後 | 今後執筆予定 |
| ⑧欠損金の繰越控除 | 赤字を10年間繰り越して将来の黒字と相殺(個人は3年) | 法人化後 | 今後執筆予定 |
| ⑨消費税の簡易課税・インボイス対応 | 簡易課税制度の選択や経過措置(2割特例等)の活用 | 法人化前後どちらも | 今後執筆予定 |

①役員報酬の決め方・見直し(所得分散)
法人化の節税効果の中でも特に大きいのが、役員報酬を通じた所得分散です。事業の利益を「法人の利益」と「個人の給与(役員報酬)」に分けることで、超過累進課税の高い税率帯を避けられること、給与所得控除という上乗せの控除が使えるようになることの2つの効果が生まれます。ただし役員報酬は、事業年度開始から3か月以内に決定し、原則1年間は金額を変えない「定期同額給与」というルールに従う必要があり、同業種・同規模の法人と比べて明らかに高すぎる金額は「過大役員報酬」として否認されるリスクもあります。所得分散の考え方や所得水準別のシミュレーションについては当事務所の別記事「法人化の一番のメリットは所得分散」で、定期同額給与・事前確定届出給与・過大役員給与・役員退職金の決め方など実務のルールについては「役員報酬」シリーズ(全6記事)で、それぞれ詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。
②出張旅費規程・日当の活用
出張が発生する経営者・従業員向けに「出張旅費規程」を整備し、旅費とは別に「日当」を支給する方法です。社会通念上相当と認められる範囲内の日当は、受け取る個人側では非課税所得として扱われ、給与のように源泉徴収や社会保険料の対象になりません。会社側では支給額の全額を損金にできるうえ、一定の要件を満たせば消費税の仕入税額控除の対象にもなります。日当の金額は法律上の上限がなく「社会通念上妥当な金額」が基準になるため、同業種・同規模の水準や国家公務員の旅費規程などを参考に設定し、規程と実際の支給実態を一致させておくことが重要です。
③社宅制度の活用
会社名義で住居を借り上げ、役員や従業員に社宅として貸与する方法です。会社が支払う家賃と、受け取る側から徴収する「賃貸料相当額」との差額が、実質的に会社の経費として節税効果を生みます。小規模な住宅であれば、賃貸料相当額は建物の固定資産税課税標準額・床面積・敷地の固定資産税課税標準額をもとにした計算式で求められ、実際の家賃よりかなり低い金額になることが一般的です。ただし契約は必ず法人名義で結ぶ必要があり、個人名義のまま会社が家賃を負担すると、その全額が給与として課税されてしまうため注意が必要です。
④生命保険の活用
生命保険は、万一の際の保障を確保しながら、将来の役員退職金の原資を計画的に準備する手段として活用されています。ただし、令和元年(2019年)の国税庁通達改正により、解約返戻率の高い定期保険等の保険料の損金算入割合が厳格に制限され、いわゆる「全額損金」タイプの節税保険はほぼ姿を消しています。契約者名義を法人から個人に変更する「名義変更プラン」という手法も一時期広まりましたが、令和3年(2021年)の通達改正で効果が縮小しました。現在は、税負担の軽減そのものよりも、保障の確保と退職金原資の準備という本来の目的を軸に検討するのが実務的です。
⑤共済・iDeCoの活用
小規模企業共済(役員本人が加入でき、掛金全額が所得控除の対象)、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済、法人・個人事業主ともに加入でき、掛金を損金・必要経費に算入できる)、iDeCo(掛金が全額所得控除)は、いずれも将来の資金準備をしながら税負担を軽くできる制度です。ただし経営セーフティ共済は令和6年10月の制度改正により、解約後2年以内に再加入した場合、その期間中の掛金が損金算入できなくなっており、以前のような短期解約・再加入という運用はできなくなっています。
⑥決算期の節税テクニック
決算が近づいたタイミングで検討できる代表的な対策として、取得価額30万円未満の減価償却資産を年間300万円まで全額損金にできる「少額減価償却資産の特例」、一定の設備投資について即時償却や税額控除を選べる「中小企業経営強化税制」、棚卸資産の評価方法の見直しなどがあります。これらの多くは決算日をまたぐと実行できなくなるため、決算の数か月前から試算・準備しておくことが重要です。
⑦交際費の損金算入枠
中小法人(資本金1億円以下)は、交際費等について「年800万円までの全額損金算入」と「接待飲食費の50%損金算入」のいずれか有利な方を選択できます。1人当たり1万円以下の飲食費は、要件を満たせば交際費そのものから除外できるため、日々の記録の残し方次第で扱いが変わってきます。この特例は令和9年3月31日までに開始する事業年度が対象とされており、期限が延長されてきた経緯はあるものの、今後の税制改正の動向は確認しておく必要があります。
⑧欠損金の繰越控除
青色申告をしている法人は、赤字(欠損金)を10年間繰り越して、将来の黒字と相殺できます(個人事業主の場合は3年間)。開業直後で赤字が出やすい時期がある事業や、大きな設備投資で一時的に赤字になる事業では、法人化によってこの繰越期間が延びること自体が、長期的な税負担の平準化につながります。
⑨消費税の簡易課税・インボイス対応
基準期間の課税売上高が5,000万円以下であれば、実際の仕入等にかかった消費税を計算せずに、業種ごとに定められた「みなし仕入率」で仕入税額控除を計算できる簡易課税制度を選択できます。また、インボイス制度に伴い免税事業者から課税事業者になった小規模事業者向けの「2割特例」は、令和8年9月30日までの日の属する課税期間で終了する予定で、その後は新たな経過措置(3割特例)が用意される見込みです。簡易課税制度を選ぶ際の届出手続きも令和8年度税制改正で緩和される予定のため、消費税の申告方法は制度改正の動向にあわせて定期的に見直すことをおすすめします。
節税手法を選ぶ際に意識したいこと
ここまで紹介した9個の手法は、どれも単独で完結するものではなく、事業の状況やタイミングに応じて組み合わせて検討するものです。①役員報酬・所得分散のように法人化の判断そのものに関わるものもあれば、⑥決算期のテクニックや⑦交際費の損金算入枠のように、法人化したあとの日々の運用で継続的に活用していくものもあります。また、いずれの手法も、実態の伴わない使い方をすると税務調査で否認されるリスクがある点は共通しています。まずは自社の状況に合いそうな手法から、実行のタイミングを踏まえて優先順位をつけていくことをおすすめします。
まとめ:まずは全体像を押さえ、優先順位をつけて取り組む
- 法人が使える節税手法には、役員報酬の見直し(所得分散)・出張旅費規程・社宅制度・生命保険・共済/iDeCo・決算期のテクニック・交際費の損金算入枠・欠損金の繰越控除・消費税の簡易課税/インボイス対応など、多岐にわたる選択肢がある
- 役員報酬の見直し(所得分散)は特に効果が大きく、当事務所の別記事(役員報酬シリーズ、法人化のメリット記事)で詳しく解説している
- 出張旅費規程・社宅制度・決算期のテクニック・交際費の損金算入枠は、法人化後の運用で継続的に活用できる手法として優先的に検討する価値がある
- 多くの手法は決算日をまたぐと実行できなくなるため、早めのスケジュール管理が重要
- いずれの手法も実態を伴った形で行うことが大原則。税務調査で否認されないよう、専門家に相談しながら進めることが望ましい
それぞれの手法のより詳しい内容や、自社にとっての優先順位については、今後この記事に続く形で個別に解説記事を公開していく予定です。具体的な導入を検討する際は、実行に移す前に一度畑間税理士事務所にご相談ください。
執筆者紹介

代表税理士 畑間 彬宏
畑間税理士事務所 代表
大手税理士法人で10年間、上場・外資系企業の税務マネージャーとして従事。現在は渋谷・新宿を拠点に、スタートアップやフリーランスの「挑戦」を支援。「事業の成功をデザインする」を掲げ、会社設立から創業融資、クラウド会計導入まで、代表本人が直接伴走するスタイルを貫く。



