【役員報酬解説4】役員報酬が高すぎるとどうなる?過大役員給与の考え方
役員報酬は高ければ高いほど良いわけではない
渋谷区代々木の税理士、畑間です。
定期同額給与のルールを守り、毎月きちんと同額を支給していれば、それだけで役員報酬は全額経費になる——実はそうとは限りません。金額そのものが「不相当に高額」だと判断されると、その超える部分は経費として認められないのです。これを「過大役員給与」といいます。今回は、何をもって「高すぎる」と判断されるのか、その考え方と実務上の目安を解説します。

「不相当に高額」かどうかは2つの基準で判定される
過大役員給与に該当するかどうかは、次の2つの基準で判定し、それぞれの基準で計算した「超える部分の金額」のうち、多い方の金額が最終的に経費として認められません。
| 基準 | 見られるポイント | 根拠 |
|---|---|---|
| 実質基準 | 職務内容、会社の利益や従業員給与とのバランス、同業・同規模の会社の役員報酬の水準 | 実態から見て金額が妥当かどうか |
| 形式基準 | 株主総会などであらかじめ決めた支給限度額を超えていないか | 手続き上、上限を超えていないか |
実質基準では、その役員がどんな仕事をしているか、会社の利益水準や従業員の給与とのバランス、同業種・同規模の会社の役員報酬の相場と比べてどうか、といった実態面から総合的に判断されます。
形式基準:株主総会で決めた上限を超えていないか
形式基準は、定款や株主総会の決議であらかじめ定めた役員報酬の支給限度額を超えていないか、という手続き面のチェックです。中小企業では、定時株主総会で「取締役の報酬総額は年額〇〇円以内」といった限度額を決議し、その範囲内で各役員への配分を取締役会で決めるのが一般的です。
なお、そもそも限度額を決めていない会社には、この形式基準自体が適用されず、実質基準のみで判定されます。ただし、会社法上は、株主総会の決議(または全株主の同意)がなければ、役員は会社に対して報酬を請求する権利を持たないと判断された判例もあります。「決議した記録が残っていない」という状態は、税務上・会社法上どちらの観点からもリスクがあるため、心当たりがある場合は早めに整備しておくことをおすすめします。
実務で見えてきた「危険な増額」のパターン
実質基準は個別の事情によって判断されるため、明確な金額の線引きがあるわけではありません。ただ、実際に過大役員給与として否認された裁判例を見ると、共通するパターンが見えてきます。それは、「会社の業績や従業員給与の伸びに対して、役員報酬の増額幅が不自然に大きい」というものです。
ある裁判例では、代表者の役員報酬について、会社の売上や利益の伸び率をもとに、前年の1.5倍程度までの増額であれば相当な範囲内と判断されました。ただし、この「1.5倍」という数値は、その会社の売上・利益の伸び率を踏まえて個別に算定された結果であり、法令や通達で定められた一律の基準ではありません。あくまで一つの参考値として捉えてください。
一方で、実際に否認された事例の多くは、前年比で3倍から5倍といった極端な増額でした。業績の伸びがそこまで大きくないにもかかわらず、役員報酬だけが急激に増えている場合、税務調査で問題視されるリスクが高くなります。増額を検討する際は、「会社の利益や従業員給与がどれだけ伸びているか」を基準に、増額幅が妥当かどうかを確認することが実務上のポイントです。
また、実質的に業務を行っていない配偶者や親族を役員にして報酬を支払っているケースにも注意が必要です。出勤の実態がほとんどなく、専任の業務も特にないような非常勤役員に高額な報酬を支払っていた事案では、実際に会社が支払っていた金額の一部しか経費として認められませんでした。役員として報酬を受け取る以上、それに見合った職務の実態があるかどうかも、あわせて確認しておきましょう。
使用人兼務役員の賞与は「支給時期」もそろえる
部長や課長など、役員でありながら従業員としての立場も兼ねる「使用人兼務役員」については、使用人としての職務に対する賞与を別途支給できます。ただし、この賞与は、他の従業員に対する賞与の支給時期と同じタイミングで支給しなければなりません。金額が相場の範囲内であっても、支給時期が従業員の賞与とずれてしまうと、その部分は役員賞与として扱われ、経費として認められなくなる可能性があります。
同業種・同規模法人との比較は何を根拠にするのか
実質基準の判定では、「同業種・同規模法人の役員報酬の水準」との比較が重要な要素になります。ここでいう同業種・同規模法人とは、業種区分・売上規模・地域などが近い会社を指し、実務上は国税庁が公表している統計データや、税務署が保有する類似法人の情報などが参考にされます。ただし、どの法人を比較対象とするかによって結果が変わり得るため、争いになった場合は「本当に類似した法人と比較されているか」自体が論点になることもあります。自社の報酬水準が同業他社と比べて著しく高くないかは、決算時期など定期的なタイミングで確認しておくと安心です。
業績連動給与という選択肢もある
上場企業を中心に、利益や株価などの指標に連動して支給額が変動する「業績連動給与」という制度もあります。同族会社ではない法人で、有価証券報告書への記載など一定の情報開示要件を満たす場合に限り認められる制度であり、中小企業のオーナー企業ではほとんど利用対象になりません。中小企業の役員給与は、基本的に定期同額給与・事前確定届出給与の枠組みで設計することになります。
報酬を減額した場合の逆のリスク
なお、過大役員給与とは逆に、役員報酬をあまりに低く設定しすぎることにもリスクがあります。極端に低い報酬は、金融機関からの信用評価や、将来の退職金算定の基礎となる最終報酬月額に影響するほか、生活費を会社からの貸付金でまかなうような運用になっている場合、貸付金の認定利息課税や、役員貸付金の残高が金融機関の審査でマイナス評価につながることもあります。報酬水準は「高すぎず、低すぎず」、事業計画とバランスを取りながら決定することが大切です。
過大かどうかの判断は毎期見直しが必要
過大役員給与に該当するかどうかは、その事業年度ごとの業績や実態にもとづいて判定されるため、一度決めた報酬水準がずっと安全というわけではありません。業績が悪化したにもかかわらず報酬を据え置いたままにしていると、翌期以降に相対的な水準感がずれてくることもあります。決算のタイミングなどにあわせて、現在の報酬額が実態や業績に見合ったものになっているか、定期的に見直す習慣をつけておきましょう。

まとめ:金額だけでなく「バランス」が見られている
- 役員報酬は、実質基準(職務内容・利益や従業員給与とのバランス・同業他社との比較)と形式基準(株主総会等で決めた上限)の2つで判定される
- 金額の一律の上限は法令で決まっておらず、個別の事情に応じて判断される
- 業績や従業員給与の伸びに対して不自然に大きい増額は、否認されるリスクが高い
- 実態のない役員(業務をほとんど行っていない配偶者や親族など)への高額な報酬は特に注意が必要
- 使用人兼務役員の賞与は、金額だけでなく支給時期も従業員とそろえる必要がある
役員報酬の増額を検討する際は、「今期は利益が出たから」という理由だけで金額を決めるのではなく、過去の業績推移や従業員給与とのバランスを踏まえて、妥当な金額かどうかを事前に確認することが大切です。次回は、退任時に支給する役員退職金の金額の決め方について解説します。
執筆者紹介

代表税理士 畑間 彬宏
畑間税理士事務所 代表
大手税理士法人で10年間、上場・外資系企業の税務マネージャーとして従事。現在は渋谷・新宿を拠点に、スタートアップやフリーランスの「挑戦」を支援。「事業の成功をデザインする」を掲げ、会社設立から創業融資、クラウド会計導入まで、代表本人が直接伴走するスタイルを貫く。





