KSK2とは?国税庁の新システムで何が変わるのか、経営者が備えるべきこと

KSK2とは|国税庁の新システムで税務調査はどう変わるのか

渋谷区代々木の税理士、畑間です。

2026年9月24日、国税庁の基幹システムが25年ぶりに刷新され、「KSK2」と呼ばれる次世代システムが稼働を開始しました。このニュースをきっかけに、「AIによる税務調査で、もう何も隠せなくなる」「見逃しゼロの時代が来る」といった刺激的な見出しをSNSやWeb記事で目にした方も多いのではないでしょうか。こうした情報の中には、会計ソフト会社等が自社サービスへの関心を高めるために、やや煽り気味に表現しているものも少なくありません。今回は、KSK2で実際に何が変わるのかという事実と、話題になっている「追徴課税が過去最高」という報道との関係を整理したうえで、経営者・個人事業主が実際に取るべき実務対応を解説します。

KSK2とは:国税庁のシステムが25年ぶりに刷新

国税庁はこれまで、「KSK(国税総合管理システム)」と呼ばれるシステムを2001年から全国の税務署で稼働させてきました。KSKは、各地の国税局・税務署が持っていた納税者の情報を、全国規模で一元的に管理できるようにした点で画期的なシステムでしたが、稼働から25年が経過し、次のような課題を抱えていました。1つ目は、申告書や申請書など紙で提出される書類への依存度が高く、データ化に手間がかかっていたことです。2つ目は、所得税・法人税・消費税といった税目ごとにデータベースが分かれていた「縦割り」構造で、同じ納税者(法人)についての税目をまたいだ突合に手間がかかっていたことです。3つ目は、システムの基盤が特定のベンダー向けの専用メインフレーム・独自OSで構築されており、保守コストの増加や対応できる技術者の不足が課題になっていたことです。KSK2は、これらの課題に対応するためのシステム刷新として、2026年9月24日に稼働を開始しました。全国で一斉にすべての機能が切り替わったわけではなく、段階的に機能がリリースされていく方針が取られています。

項目 旧KSK(2001年稼働) KSK2(2026年9月24日稼働)
データの扱い 紙の提出書類への依存度が高い AI-OCRで紙の申告書・申請書も自動的にデータ化
税目ごとのデータ管理 所得税・法人税・消費税等が別々のデータベース(縦割り) 税目をまたいで横断的にデータを突合・分析できるよう統合
システム基盤 専用メインフレーム・独自OS(保守コスト増・技術者不足) 汎用的な標準システム基盤へ刷新
現場でのデータ確認 署に戻ってデータを確認する必要がある場面が多い 現場からも統合されたデータへアクセスしやすくなる

KSK2で何が変わるのか:確認できる技術的な変化

国税庁の公表資料から確認できる、KSK2の具体的な変更点は主に次の3つです。1つ目は、AI-OCR(人工知能による文字認識)の導入です。手書きのフリーピッチ欄を含む申告書・申請書をAI-OCRで読み取れるよう、約1,900種類にのぼる申告書等の様式自体も見直されました。これにより、紙で提出された書類もスムーズにデータ化されるようになります。2つ目は、税目をまたいだデータの統合です。これまで別々に管理されていた所得税・法人税・消費税等のデータベースが統合され、同一の納税者・関連する法人について、税目をまたいだ横断的な分析がしやすくなりました。3つ目は、法定調書と申告書等の突合精度の向上です。マイナンバーを活用し、法定調書(取引先から税務署に提出される支払調書等)と実際の申告内容との「名寄せ」や突合を、より正確かつ効率的に行えるようになったとされています。なお、「調査対象の選定にAIを活用する」という取り組み自体は、実はKSK2によって初めて導入されたものではありません。国税庁は、KSK2が稼働する前の令和5事務年度・令和6事務年度の時点で、すでに調査対象の選定にAIを活用していたことを公表資料で明らかにしています。KSK2によって変わるのは、この既存のAI活用が、統合されたデータ基盤の上でより効率的に機能するようになる、という点だと理解しておくのが実態に近いでしょう。

「追徴課税が過去最高」の報道とKSK2の関係を正しく理解する

KSK2の話題と合わせて、「追徴課税が過去最高を記録した」というニュースを見た方も多いと思います。ここは誤解が生じやすいポイントなので、時系列を整理しておきましょう。所得税・消費税について追徴税額が過去最高(1,398億円)になったと公表されたのは令和5事務年度(2023年7月〜2024年6月)の実績であり、法人税について過去15年で最高水準の追徴税額(3,407億円)になったと報じられたのは令和6事務年度(2025年12月公表)の実績です。いずれも、KSK2が稼働した2026年9月より前の、旧システム下での実績です。つまり、これらの「過去最高」という結果は、KSK2によってもたらされたものではなく、旧システムの下で既に行われていた調査対象選定へのAI活用の成果です。KSK2が稼働してからまだ1か月ほどしか経過しておらず、国税庁の調査実績は例年11月から12月にかけて年1回公表される性質のものであるため、KSK2自体による調査結果のデータは、本記事執筆時点ではまだ存在しません。一部の会計ソフト会社等のコンテンツでは、この「過去最高」の実績をKSK2の効果であるかのように結びつけて説明しているケースも見られますが、時期が異なる話を混同した誇張表現であるため、注意が必要です。あわせて押さえておきたいのが、実地調査の「件数」自体は、コロナ禍前の水準と比べると減少しているという事実です。つまり、調査の件数を闇雲に増やしているのではなく、データに基づいてより的確に対象を絞り込み、1件当たりの追徴税額を増やす「少数精鋭型」の調査へと変化していると捉えるのが実態に近いといえます。

KSK2稼働後、経営者・個人事業主が備えるべきこと

KSK2によって税目をまたいだデータの突合がしやすくなったことを踏まえ、過度に恐れるのではなく、次のような地に足のついた対応を進めておくことをおすすめします。

  • 消費税・法人税(所得税)・源泉所得税など、税目をまたいで数字が「なんとなく合っている」状態ではなく、整合性の理由をきちんと説明できる状態にしておく
  • 役員報酬や関連当事者間(同族会社内・親族間)の取引について、資金の流れと取引の実態を裏付ける記録をきちんと残しておく。日本の法人の多くは家族経営(同族会社)であり、統合されたデータ基盤の下では、こうした関連当事者間の取引が自然と分析の対象になりやすい
  • 電子帳簿保存法に沿った記帳・証憑の保存を徹底し、請求書・領収書と実際の入出金記録が正確に一致する状態を保つ
  • 税理士法第33条の2に基づく書面添付制度(申告書の作成過程で確認した事項や判断根拠を税理士が書面に記載して添付する制度)の活用を検討する。税務署から疑問点を質問される前に、判断の根拠を自ら説明しておく機会を持てる点にメリットがある
  • KSK2稼働直後は国税庁側も運用が手探りの段階にあると考えられるため、過剰に反応して対応を急ぐのではなく、普段通りの誠実な記帳・申告を継続する

まとめ:KSK2は「監視の強化」ではなく「データ基盤の近代化」

  • KSK2は2026年9月24日に稼働を開始した、国税庁の基幹システムの25年ぶりの刷新で、AI-OCRによる紙書類のデータ化、税目をまたいだデータ統合、法定調書との突合精度向上などが主な変更点
  • 調査対象選定へのAI活用自体はKSK2以前から行われており、KSK2はその基盤を近代化・効率化するものと理解するのが実態に近い
  • 「追徴課税が過去最高」という報道は、KSK2稼働前の旧システム下での実績であり、KSK2自体の成果ではない点に注意が必要
  • 実地調査の件数自体は減少傾向にあり、的確に対象を絞り込む「少数精鋭型」の調査への変化が進んでいると考えられる
  • 経営者・個人事業主としては、過度に恐れるのではなく、税目間の整合性を説明できる記帳・証憑管理を徹底することが最も現実的な対策になる

ご自身の申告内容や記帳方法について、KSK2をきっかけに一度見直しておきたいという方は、お気軽にご相談ください。

執筆者紹介

代表

代表税理士 畑間 彬宏

畑間税理士事務所 代表

大手税理士法人で10年間、上場・外資系企業の税務マネージャーとして従事。現在は渋谷・新宿を拠点に、スタートアップやフリーランスの「挑戦」を支援。「事業の成功をデザインする」を掲げ、会社設立から創業融資、クラウド会計導入まで、代表本人が直接伴走するスタイルを貫く。

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