【役員報酬解説2】定期同額給与とは?決め方と改定できるタイミングを解説

役員報酬はなぜ「毎月同額」でないといけないのか

渋谷区代々木の税理士、畑間です。

「今月は利益が出そうだから役員報酬を増やそう」「決算間際に利益が読めてきたので調整したい」——これができてしまうと、会社は利益が出そうなタイミングを見計らって役員報酬を動かし、法人税の負担を自由に調整できてしまいます。これを防ぐために設けられているのが「定期同額給与」というルールです。今回は、その基本的な考え方と、例外的に金額を変更できるタイミングについて解説します。

定期同額給与の基本ルール

定期同額給与とは、文字どおり「毎月同額」で支給する役員報酬のことです。会社が役員に支給する給与のうち、この定期同額給与に該当しないものは、原則として経費(損金)にできません。

金額を決めるタイムリミットは事業年度開始から3か月以内

多くの会社では、決算後に開催する定時株主総会で役員報酬の金額を決定します。この金額は、原則として事業年度が始まってから3か月以内に確定させる必要があります。定時株主総会がこの期間内に開催されるのが一般的なスケジュールであるためです。

なお、「同額」というのは額面金額が同じであることが基本ですが、源泉所得税や社会保険料が控除された後の手取り額が同額であれば、控除額が毎月多少変動しても「同額」として扱われます。また、毎月一定額を外貨で支給する場合は、円換算額が変動しても定期同額給与に該当します。

決めた金額を期の途中で勝手に変えると、変更分だけ経費にならない

いったん確定させた役員報酬を、後述する例外的なケースに該当しない理由で期の途中で増額・減額してしまうとどうなるでしょうか。この場合、全額が経費にならなくなるわけではありませんが、変更前の金額を超える(または下回る)部分については経費として認められません。

たとえば、期首から月80万円で支給していた役員報酬を、通常改定で7月から月90万円に引き上げ、さらに10月から特に理由なく月100万円に増額した場合、10月以降は「90万円に10万円を上乗せして支給した」とみなされます。この上乗せ分10万円×6か月分にあたる60万円は、経費として認められません。「多く払った分だけ損」というシンプルな話ではなく、理由のない増額・減額は必ずこうした形で経費計算に跳ね返ってくる、という点を押さえておく必要があります。

例外的に金額を変更できる3つのケース

役員報酬は、次の3つのケースに該当する場合に限り、期の途中でも経費として認められる形で改定することができます。

改定できる理由 どんなときに認められるか 増額/減額
①通常改定 事業年度開始から3か月以内に、株主総会などで決定する 増額・減額どちらも可
②臨時改定事由 代表者の急逝による昇格、合併・分割に伴う職務内容の大きな変更、病気療養など、 やむを得ない事情による地位・職務の変化 増額・減額どちらも可
③業績悪化改定事由 経営状況の著しい悪化により、株主・金融機関・取引先との関係上、 減額せざるを得ない客観的な事情がある 減額のみ(増額不可)

通常改定:定時株主総会での見直し

最も一般的なのが、決算後の定時株主総会などで、新しい事業年度の役員報酬額を決定する「通常改定」です。前述のとおり、事業年度開始から3か月以内に決定すれば、増額・減額のどちらでも認められます。

臨時改定事由:昇格や職務内容の大きな変化があったとき

期の途中であっても、役員の地位や職務内容に大きな変化があった場合は、それに応じた改定が認められます。代表的な例は次のとおりです。

  • 代表取締役の急な退任・死去により、他の役員が新たに代表取締役に就任した場合の増額
  • 合併や会社分割により、役員の担当業務が大きく変わった場合の増額・減額
  • 病気療養などで一時的に職務を十分に果たせなくなった場合の減額(回復後に元の金額へ戻す増額も含む)

いずれも「地位や職務内容が実質的に変わったこと」が前提となる点がポイントです。

業績悪化改定事由:「なんとなく利益が伸びなかった」では認められない

業績悪化を理由に役員報酬を減額したいという相談は少なくありませんが、この事由はかなり厳格に判断される点に注意が必要です。単に「思ったより利益が出なかった」「資金繰りが一時的に苦しい」という程度では、業績悪化改定事由には該当しません。

認められるのは、経営状況が客観的に見て著しく悪化し、株主・取引金融機関・取引先といった利害関係者との関係上、役員報酬を減額せざるを得ない事情がある場合です。たとえば、金融機関との間で借入金の返済リスケジュールを協議している、経営改善計画の中で役員報酬の減額が盛り込まれている、といったケースが該当します。

また、業績悪化改定事由による改定は減額のみが対象で、増額はできません。さらに、この事由で一度減額した後、同じ事業年度中に業績が回復したからといって、元の金額に戻す増額改定はできない点にも注意が必要です(元に戻すには、②の臨時改定事由に該当する必要があります)。

社宅や低利貸付などの現物給与も対象になる

役員報酬は金銭の支給だけではありません。社宅の無償提供や、会社からの低利貸付といった経済的利益(現物給与)も、その利益の額が毎月ほぼ一定であれば、定期同額給与として扱われます。逆に、金額が毎月大きく変動するものは対象外となるため、こうした福利厚生的な取り扱いを導入する際は注意が必要です。

役員報酬を減額する際のもう一つの注意点:社会保険料への影響

役員報酬を減額する場合、社会保険料(標準報酬月額)の見直しにも注意が必要です。原則として、月額変更届の対象となるのは固定的賃金に変動があった月から継続した3か月間の報酬額が、従来の標準報酬月額から一定以上変動した場合ですが、役員報酬の減額改定であっても、要件を満たせば随時改定(月額変更)の対象となり、社会保険料もあわせて見直されることになります。定期同額給与としての税務上の取り扱いと、社会保険上の手続きは別の制度であるため、改定時にはどちらも確認しておく必要があります。

非常勤役員の報酬にも同じルールが適用される

定期同額給与のルールは、常勤役員に限らず、非常勤役員やみなし役員に対する報酬にも同様に適用されます。「非常勤だから多少金額が変動しても構わないだろう」という自己判断は禁物です。毎月の支給額を一定に保つこと、そして期の途中で変更する場合は前述の3つの例外的なケースに該当するかどうかを、常勤・非常勤を問わず確認するようにしましょう。

まとめ:改定は「いつ」「なぜ」変えるかがすべて

  • 役員報酬は原則「毎月同額」でなければ経費にできない(定期同額給与)
  • 金額は事業年度開始から3か月以内に確定させる必要がある
  • 期の途中で理由なく金額を変えると、変更した分だけ経費として認められなくなる
  • 例外的に改定が認められるのは、通常改定・臨時改定事由・業績悪化改定事由の3つのケースのみ
  • 特に業績悪化改定事由は要件が厳しく、「なんとなく利益が伸びなかった」程度では認められない

役員報酬の改定は、税務上の判断を誤ると想定外の税負担につながりやすいテーマです。特に業績悪化を理由とした減額を検討されている場合は、実行前に一度専門家に相談することをおすすめします。次回は、役員に賞与を出したい場合に必要な「事前確定届出給与」の届出ルールについて解説します。

執筆者紹介

代表

代表税理士 畑間 彬宏

畑間税理士事務所 代表

大手税理士法人で10年間、上場・外資系企業の税務マネージャーとして従事。現在は渋谷・新宿を拠点に、スタートアップやフリーランスの「挑戦」を支援。「事業の成功をデザインする」を掲げ、会社設立から創業融資、クラウド会計導入まで、代表本人が直接伴走するスタイルを貫く。

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